泌尿器のがんとは

泌尿器のがんのイメージ写真

泌尿器(尿の生成から排泄までの器官)で発生したがんのことで、主に腎がん、膀胱がん、前立腺がんがあります。

腎がん

腎細胞がんとも呼ばれます。
腎実質に悪性腫瘍が発生したものです。
主に50~60代の男性に好発しやすいのが特徴で、高齢になるにつれてそのリスクは高まるようになります。
初期の腎がんは症状がみられることは稀で、健康診断での画像検査などで発見されるケースが大半です。
さらに病状がある程度まで進むと、発熱、体重の減少、倦怠感、貧血といった症状のほか、肉眼で確認できる血尿、腰背部の痛み、腹部の腫瘤(しこり)、足のむくみなども現れるようになります。
画像検査(造影剤を用いたCT、腹部超音波検査、MRI)により腎臓内の腫瘤の有無を確認していくほか、体の状態を調べる血液検査も行います。
組織診断のため腎生検を行う場合もあります。
早期の腎がんは基本的に手術療法が第一選択となります。
4㎝以下であれば腎部分切除術が行われることが増えています。
手術療法で腫瘍の摘出が難しい場合は、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法やサイトカイン療法が行われます。

膀胱がん

泌尿器がんのなかで最も多く、高齢男性(特に60~70代)で多くみられます。
男女比では男性の方が4倍程度は発症リスクが高くなります。
初期症状は、血尿(無症候性肉眼的血尿)、頻尿、排尿時の痛みといったもので、同疾患が進行すると排尿困難などによる尿路閉塞、がんの転移や浸潤による疼痛、体重減少といった症状が現れるようになります。
また発症要因としては、喫煙、慢性的な膀胱の炎症(膀胱結石、神経因性膀胱など)、ナフチラミン、ベンチジン、アニリン色素といった発がん物質への曝露などが挙げられます。
血尿などの症状がみられて膀胱がんが疑われる場合は、尿中のがん細胞を調べる尿細胞診、超音波検査や膀胱鏡検査によって膀胱内の状態を確認することで診断をつけていきます。
治療は膀胱がんの進行の程度、発生部位によって異なります。
多くは筋層非浸潤がん(膀胱の筋層まで達していないがん)で、1週間程度の入院でTURBT(経尿道的膀胱切除術)による内視鏡手術が行われます。
膀胱がんは非常に再発しやすい疾患で、約半数の方が再発します。
定期的な経過観察も重要です。
上皮内がんであれば、再発を予防するために抗がん薬やBCGによる膀胱内注入療法が選択されます。
また筋層浸潤がん(膀胱筋層まで達しているがん)であれば、膀胱全摘除術を中心として、抗がん剤治療を組み合わせる場合があります。

前立腺がん

前立腺で発生するがんです。
胃がんや肺がんとともに男性の罹患するがんで最も多いがんのひとつです。
発症初期は自覚症状が出にくいのも特徴です。
ある程度進行すると排尿困難、尿閉、残尿感といった症状が出ますが、これらは前立腺肥大症の症状にもよく似ています。
骨やリンパ節に転移すると、その部位に痛みなどの症状が現れるようになります。
早期発見には血液中のPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカー測定が有用で、検診などで見つけることが可能です。
しかし本邦では検診の普及率は高くなく、残念ながら君津市を中心とした南房総地区では進行した状態で医療機関を受診される方が多いのが現状です。

発症の要因については、加齢(50歳を過ぎると発生率が高くなる)、遺伝、食生活(動物性脂肪をよく摂取する食事の欧米化など)、人種(黒人が最も多く、黄色人種は少ない)といったものが挙げられていますが、日本では前立腺がんの患者さんは年々増加傾向です。
PSA検査で4ng/mLを超えている場合は追加検査を行いますが、4~10ng/mlはいわゆるグレーゾーンと呼ばれ、前立腺がんではないのに数値が高く出ている場合もよく見られます。
PSA自体は正常な前立腺にも存在しており、前立腺肥大症や炎症、体調などでも数値が上がることがあります。
PSA再検査やエコー、直腸診、MRI検査などで前立腺がんの疑いが高いと判断した場合は、近隣の連携病院に紹介させていただき前立腺針生検による組織診断でがんの有無を確定します。
前立腺がんの診断がついた場合は、進行度を調べるための画像検査(MRI、CT、骨シンチグラフィ)などを行います。
前立腺がんの治療は手術、放射線治療、ホルモン治療、抗がん剤治療、監視療法など多岐にわたります。
がんの悪性度や進行度、年齢や患者さんやご家族の病気に対する考え方など総合的に判断し治療法を決定していきます。

その他、泌尿器科がんとしては腎盂がん、尿管がん、精巣がん、陰茎がん、副腎がんなどがあります。